
医療従事者が行う医療行為やケアの一部を、適切に訓練を受けた介護者や家族が行うことができる行為を指します。
ここでは、その具体的な種類や細分化された内容について説明します。

吸引は、気道にたまった痰や唾液を取り除くためのケアです。これにより、呼吸を楽にし、誤嚥を防ぎます。主に以下の場所から吸引します。
- 口腔内吸引
口の中の唾液や痰を吸引します。
- 鼻腔吸引
鼻から喉にかけての痰を吸引します。
- 気管切開部位の吸引
気管切開を行っている場合、その切開部から直接痰を吸引します。
吸引ケアは、利用者の気道にたまった痰や唾液を取り除く行為です。主に呼吸が難しい方や、咳で痰を出せない患者に行います。
吸引器を使い、カテーテル(細い管)を口や鼻、あるいは気管切開した部分から挿入して吸引します。清潔な環境と、適切なカテーテルの長さや吸引圧を調整することが重要です。吸引中は患者の体位を変えることで、痰が自然に動くのを促進する技術(体位ドレナージ)が使われることもあります。
倫理的・社会的課題
家族や介護者が吸引ケアを行う場合、適切な訓練が不十分だと安全性に懸念があります。また、介護者が医療行為をどこまで担うべきかという倫理的な課題もあります。

経口での栄養摂取が難しい場合、経管を通じて栄養を補給します。以下の方法があります。
- 胃ろう
腹部に開けた小さな穴から、直接胃に栄養を送ります。
- 経鼻胃管
鼻から管を挿入し、食道を通じて胃に栄養を送ります。
経管栄養は、食事を口から摂取できない患者に、チューブを使って直接胃や腸に栄養を送るケアです。
・胃ろうは、腹部に開けた小さな穴からチューブを挿入し、栄養を供給します。この穴(胃ろう)は手術によって作成され、日々のケアが必要です。
経鼻胃管は、鼻から胃までチューブを挿入し、液体状の栄養を流し込む方法です。利用者が寝た状態でチューブを挿入するため、胃に正確に入るように確認が必要です。
倫理的・社会的課題
経管栄養を長期にわたって行うかどうかの判断は、患者のQOL(生活の質)や生命延長に関する倫理的な問題を含みます。特に、高齢者や重度障害者の場合、延命措置としての経管栄養がどこまで望ましいか、家族や医療従事者間で意見が分かれることがあります。また、家庭で行う場合の衛生管理やトラブル対応の難しさから、介護者の心理的負担も大きくなります。

導尿は、尿道にカテーテルを挿入して膀胱内の尿を排出する行為です。主に以下のタイプがあります。
- 間欠導尿
一定の間隔で尿を排出するために一時的にカテーテルを挿入する。
- 留置カテーテル
継続的に尿を排出するためにカテーテルを膀胱に留置する。
導尿は、膀胱にたまった尿をカテーテルを用いて排出する方法です。尿が自然に排出されない場合や、頻繁に膀胱を空にする必要がある場合に行います。
カテーテルを尿道に挿入し、膀胱内の尿を排出します。医療用の潤滑剤を使い、尿道へのダメージを防ぐ技術が求められます。
倫理的・社会的課題
導尿は感染リスクが高いため、常に清潔な環境を維持する必要があります。特に家庭での導尿は、感染症のリスク管理が非常に重要です。
長期的な導尿により、尿道や膀胱に損傷が生じる可能性もあるため、利用者の健康管理と安全性をどのように担保するかが課題です。

在宅で酸素を供給する装置を使用し、酸素不足を補います。慢性的な呼吸不全やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの利用者に使用されます。

人工呼吸器を使って、適切な呼吸をサポートします。自発呼吸が難しい場合や呼吸補助が必要な場合に行われ、以下の方法があります。
- 侵襲的人工呼吸
気管切開を行い、そこにチューブを挿入して行う。
- 非侵襲的人工呼吸
鼻や口にマスクをつけ、外部から気道に空気を送り込む方法。
人工呼吸器は、患者が自分で呼吸できない場合に機械的に呼吸をサポートする装置です。重度の呼吸障害や神経疾患の利用者に使われます。
侵襲的人工呼吸では、気管切開を行い、そこから管を挿入して人工呼吸器に接続します。毎日のケアやカニューレの交換が必要です。
倫理的・社会的課題
人工呼吸器を使用する患者の生活の質や、装置に依存する生活への負担が大きな問題です。どのタイミングで人工呼吸器を使い、またその使用を中止するかは、家族と医師が深く関与する倫理的な問題になります。
人工呼吸器を使用する利用者が自宅で生活する場合、家族や介護者にかかる心理的・身体的負担も大きいです。

褥瘡は、寝たきりや動けない状態が続くことで体の特定の部分に圧力がかかり、血流が阻害されて皮膚や組織が壊死することを指します。このケアは、予防と治療の両方に焦点を当てます。
・圧力分散マットの使用
体圧を分散させる特殊なマットレスを使用する。
・体位変換
定期的に体の向きを変えて、特定の部位にかかる圧力を減らす。

栄養や薬剤を直接血管に注入するケアで、体液バランスの調整や薬物の投与を行います。自宅で行う場合、適切な衛生管理と技術が必要です。

痰が自力で出せない利用者に対して、痰を排出しやすくするためのサポートを行います。体位を変えることで自然に痰を出しやすくしたり、咳を促進する装置を使用します。

医療的ケアを提供している際、緊急事態(呼吸停止や心停止など)が発生する場合があります。その際の対応は、AEDの使用や心肺蘇生法(CPR)の技術が求められます。

患者が自宅で安全に薬を服用できるようにするための支援も重要です。薬の保管方法、服薬タイミングの指導などが含まれます。
医療的ケアは非常に専門的であり、家族や介護者が行う場合、医師や看護師の指導や監督が必須となります。
医療的ケアが生まれた背景には、医療技術の進展や社会の高齢化、慢性疾患や障害を持つ人々の増加といった複数の要因があります。
